- カスタマージャーニーの理論は、一本道のファネルから、行き来するループへ変わってきた
- ジャーニーの形は、商品への関与の高さと、決める人の数で大きく違う。AIの使われ方も業界で差がある
- AIは「調べる」「比べる」の段階に入った。2027年のジャーニーは、AIの接点を前提に描き直す必要がある
こんにちは、アースダイバー代表の佐藤です。AIが広がって、ウェブマーケティングは取るべき戦略も、実行のやり方も変わりました。アースダイバーは、その新しい前提で戦略を考え、実行する仕組みまでつくる会社です(ご相談はこちら)。
AI検索の登場で、カスタマージャーニーは変わりました。検索結果のページを何枚も読み比べる前に、AIに聞いて答えを読み、候補を絞る顧客が増えています。米国では、AI検索を使う人の44%が、AI検索をいちばんの情報源に挙げています(McKinsey)。
この記事では、カスタマージャーニーとは何かを、マーケティングの理論の流れから整理します。そのうえで、業界によってジャーニーがどれだけ違うか、AIですでに何が起きたかを、海外と日本の調査から見ていきます。最後に、2027年に向けたジャーニーの描き直し方と、その手順をまとめました。新しい事業を考えるときにも、いまの事業のジャーニーを見直すときにも使える内容にしています。
- カスタマージャーニーの理論は、一本道のファネルから、行き来するループへ変わってきた
- ジャーニーの形は、商品への関与の高さと、決める人の数で大きく違う。AIの使われ方も業界で差がある
- AIは「調べる」「比べる」の段階に入った。2027年のジャーニーは、AIの接点を前提に描き直す必要がある
目次
- 1カスタマージャーニーとは:顧客が知ってから買い、使い続けるまでの道のり
- 2理論の流れ:一本道のファネルから、ループと「混沌とした中間」へ
- 3業界による違い:関与の高さと、決める人の数で、ジャーニーの形が変わる
- 4AIで起きた変化:「調べる」「比べる」が、AIとの会話に移った
- 5業界別のAIの使われ方:旅行・金融・家電が高めで、住宅・ゲームは低め
- 62027年のカスタマージャーニー:AIの接点を前提に描き直す
- 7私の見立て:まず、自社の業界でAIがどれだけ使われているかを知る
- 8描き方:AIを入れたジャーニーマップを、5つの手順でつくる
- 9まとめ:2027年のカスタマージャーニーは、AIの接点から描く
- 10調査の概要:英語・日本語・中国語の資料を確認
- 11注意点:調査の対象と時点で、数字は変わる
- 12よくある質問:カスタマージャーニーとAI
カスタマージャーニーとは:顧客が知ってから買い、使い続けるまでの道のり
カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを知り、調べ、比べ、買い、使い、また次の購入や紹介につながるまでの道のりのことです。その道のりを、顧客の行動・考え・気持ちと、企業との接点に分けて図にしたものを、カスタマージャーニーマップと呼びます。
学術の世界でよく参照されるのが、マーケティング研究者のキャサリン・レモン氏とピーター・フェルフーフ氏が2016年に『Journal of Marketing』に発表した論文です。2人は、ジャーニーを「購入前」「購入」「購入後」の3つの段階に分け、購入後の体験が次の購入前に戻ってくる、くり返しの流れとして整理しました(Journal of Marketing)。
この論文では、顧客と企業の接点(タッチポイント)を4つに分けています。
| 接点の種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ブランドが持つ接点 | 企業が設計し、管理する | 広告・自社サイト・店舗 |
| パートナーが持つ接点 | 企業とパートナーが一緒に設計・管理する | 販売店・代理店・ECモール |
| 顧客が持つ接点 | 企業が管理できない、顧客自身の行動 | 自分で比べる・試す・使う |
| 社会的・外部の接点 | 他者や第三者の情報 | 口コミ・レビューサイト・SNS・報道 |
出典:Lemon, K. N. & Verhoef, P. C.(2016)。例は筆者が加えた
この4つの分け方は、AIの話をするときにも役に立ちます。後で書くように、AIの答えのもとになる情報には、企業の外にある情報が多く含まれるからです。
理論の流れ:一本道のファネルから、ループと「混沌とした中間」へ
カスタマージャーニーの考え方は、時代ごとに形を変えてきました。

いちばん古いのがAIDMAです。注意(Attention)・関心(Interest)・欲求(Desire)・記憶(Memory)・行動(Action)の順に進むモデルです。カスタマージャーニーという言葉が広まる前の購買行動のモデルで、ジャーニーの考え方のもとになりました。1920年代に米国のサミュエル・ローランド・ホール氏が提唱したとされ、日本で広く使われてきました(カオナビ)。顧客は順番に段階を進み、途中で減っていく。いわゆるファネル(じょうご)の考え方です。
2004年には電通が、ネットの時代のモデルとしてAISASを示しました。関心のあとに検索(Search)、行動のあとに共有(Share)が入ります(dentsu-ho)。顧客が自分で調べ、買ったあとに発信することが、ジャーニーに組み込まれました。
マッキンゼーは2009年、5つの業界・約2万人の調査をもとに、購買の意思決定を円を描くループとして示しました。最初に頭に浮かぶ候補(初期検討)・調べて比べる段階(能動的な評価)・購入・購入後の4つです。購入後の体験がよければ、次も同じブランドをそのまま選ぶ「ロイヤルティ・ループ」に入ります(McKinsey)。この調査では、評価の段階の接点の約3分の2は、口コミやネットの評判など、消費者が自分で動く接点でした。最初の候補に入ったブランドは、入らなかったブランドより最大3倍買われやすいことも示されています(同)。
2011年には、Googleが、店頭で商品に出会う前のネットで調べる瞬間を、ZMOT(ゼロ番目の真実の瞬間)と名づけました。買い物客が意思決定に使う情報源は平均10.4で、前年の5.3からほぼ倍になっていました(Google)。
法人の購買については、ガートナーが2018年に、課題の特定・解決策の探索・要件の定義・取引先の選定・検証・社内の合意の6つの「購買の仕事」を示しました。買い手は順番どおりに一度で進むことは少なく、ほとんどの仕事に一度は戻ります(Gartner)。
2020年には、Googleが、きっかけと購入の間にある「混沌とした中間(メッシーミドル)」を示しました。人は、選択肢を広げる「探索」と、絞り込む「評価」を行き来しながら決めていきます。その間に、社会的証明(ほかの人の評価)・権威・希少性など6つの心理的な傾向が判断に影響するとしています(Google)。
一本道のファネルから、顧客が自分で調べて行き来し、購入後の体験が次につながるループへ。理論はこう変わってきました。そのあいだ、顧客が使う情報源は増え続けてきました。
業界による違い:関与の高さと、決める人の数で、ジャーニーの形が変わる
ジャーニーの形は、業界や商品によってまったく違います。違いを決める軸として、私は2つを使っています。商品への関与の高さ(価格・リスク・こだわり)と、決めるのに関わる人の数です。
関与の高さで商品を分ける考え方は、広告会社FCBが1980年代に示した「FCBグリッド」が古典です。関与の高低と、理性で選ぶか感情で選ぶかの2軸で、商品を4つに分けます。2021年には、ネットでの購買を加えた改訂版も発表されています(Journal of Advertising Research)。

業界ごとの違いを、データで見てみます。
| 業界 | ジャーニーの特徴 | データ |
|---|---|---|
| 日用品・食品 | 店頭で決める割合が高い | スーパーの利用者では「カテゴリーは決めているが、商品は店頭で決める」が約半数(コマースピック) |
| 家電・PC | スペックを比べる | 商品全般の数字だが、家電で特に当てはまると見ている。買い物に生成AIを使う人(商品全般)の用途で多いのは、専門用語やスペックの解説66.6%・性能の比較64.7%(博報堂買物研究所) |
| 自動車 | 長く、ネットと店頭を行き来する | 米国の2024年の調査では、購入までに約14時間、うちネットが約7時間(Cox Automotive)。日本ではカタログ44%・展示車や試乗車39%を参考にしている(J.D. Power) |
| 住宅 | 実物を見る接点が強い | 注文住宅を建てた世帯の、施工者についての情報収集は住宅展示場が最多(49.0%、令和3年度調査)(国土交通省) |
| 金融・保険 | 人と信頼が中心 | 生命保険の加入は営業職員経由が56.7%(生命保険文化センター) |
| 医療・美容 | 口コミと規制 | 約6割が、新しいクリニックに行く前にGoogleマップの口コミを確認(Web担当者Forum)。治療の内容や効果に関する体験談は、広告に使えない(厚生労働省) |
| BtoBのIT・SaaS | 関わる人が多く、行き来する | 1件の購買に社内13人・社外9人が関わる(Forrester) |
| 大学・進学 | 候補を広く集めて絞る | 資料請求は平均6.29校、出願は2.42校(リクルート進学総研) |
マッキンゼーの2009年の調査は、業界の違いをもうひとつの面から示しています。最終的に買ったブランドが、最初の候補から選ばれたのか、比べる途中で加わったのか、ロイヤルティ・ループから選ばれたのかの割合です。

自動車では63%が最初の候補から選ばれ、ロイヤルティ・ループは7%でした。自動車保険は反対で、78%がロイヤルティ・ループからでした。毎年、同じ会社で更新する人が多い商品です。スキンケアでは、比べる途中で加わったブランドが37%と、ほかの業界より大きくなっています(McKinsey)。同じ「ジャーニー」でも、力を入れるべき段階は業界で違います。
AIで起きた変化:「調べる」「比べる」が、AIとの会話に移った
では、AIで何が変わったのか。海外と日本の調査で見ていきます。

マッキンゼーが2025年8月に米国の消費者1,927人に聞いた調査では、約半数がAI検索を使っていました。AI検索の利用者のうち44%が、AI検索をいちばんの情報源に挙げています。従来の検索は31%、ブランドや小売のサイトは9%でした(McKinsey)。
日本でも同じ流れがあります。博報堂買物研究所の2026年2月の調査では、買い物で生成AIを使う人は24.6%でした。その人たちが情報源として信頼する割合では、生成AIの答え(51.7%)がECサイトのレビュー(48.6%)を上回りました(PR TIMES)。
AIの要約が出ると、リンクは押されにくくなります。米国のPew Researchが2025年3月の閲覧データを調べたところ、Google検索でAIの要約が出たとき、検索結果のリンクがクリックされた割合は8%でした。要約が出ないときは15%です(Pew Research Center)。
法人の購買では、営業に会う前に候補がほぼ決まっています。6senseの2025年の調査(約4,000人)では、95%のケースで、最終的に選ばれた会社は、検討を始めた日の候補リストに入っていました。売り手に初めて連絡するのは、購買の道のりの61%の地点です(6sense)。その候補づくりに、AIが使われ始めています。G2の2026年の調査では、69%の買い手が、AIのすすめで予定と違う会社を選んでいました(G2)。
日本のHubSpotの2026年の調査でも、購買の判断に影響が増したものの1位は「生成AI・AI検索」(41.6%)でした(ECのミカタ)。売り手に連絡する人のうち、複数の候補を挙げた段階以降に初めて連絡する人は63.5%です(コマースピック)。
一方で、購入までAIに任せる人はまだ少数です。Visaが2026年6月に、生成AIを月1回以上使う4,120人に聞いた調査では、確認なしでAIに自動で買ってもらうと答えた人は1%でした(ネットショップ担当者フォーラム)。PLAN-Bマーケティングパートナーズの2026年5月の調査(生成AIを検索に使う500人)では、AIにすすめられた商品をAI以外で確かめる手段として、検索エンジンが87.4%で最も多くなりました(ネットショップ担当者フォーラム)。AIが入ったのは、主に「調べる」「比べる」の段階です。
業界別のAIの使われ方:旅行・金融・家電が高めで、住宅・ゲームは低め
AIの使われ方は、業界によって差があります。読売広告社が2026年6月に行った調査では、カテゴリーごとに、購入を検討した人のうち生成AIを使った割合が出ています。

旅行(35.3%)・金融商品(30.1%)・家電・PC(29.8%)が高めで、住宅・不動産(18.6%)・ゲーム(19.9%)・ギフト(21.3%)が低めでした(PR TIMES)。いちばん高い旅行でも、3人に1人ほどです。
旅行・金融・家電は、比べる項目が多く、情報が専門的な商品です。こうした商品でAIに聞く人が多いと私は見ています。ただ、住宅・不動産は、関与が高いのに割合がいちばん低いカテゴリーでした。展示場など、実物を見る接点が強い商品では、AIを使う人がまだ少ないのかもしれません。反対に、関与が低めの食品・飲料も28.8%と高めです。関与の高さや情報の専門性だけでは説明できない差です。
AIから来た人の行動も、業界で違います。米国のアドビのデータでは、AI経由で小売サイトに来た人の購入率は、ほかの経路より42%高くなりました(2026年3月、Adobe)。一方、米国の旅行サイトでは、AI経由の購入率がほかより28%低くなっています(2026年5月、Adobe)。時期は違いますが、旅行では、AIで調べたあと、予約は別の場所でする人が多いのかもしれません。
2027年のカスタマージャーニー:AIの接点を前提に描き直す
ここまでの理論とデータを合わせて、2027年に向けたジャーニーの形を描いてみました。

まず、「調べる」「比べる」の中心にAIが入ります。きっかけのあと、顧客はAIに聞き、AIの答えを読んで候補を絞ります。マッキンゼーが、GoogleのAIによる概要が参照する情報源を分析したところ、ブランドの自社サイトは5〜10%にとどまりました(McKinsey)。残りの多くは、自社サイトの外の情報です。
次に、「試す」がオンラインでできるようになってきました。Googleは2025年10月、服のバーチャル試着を日本にも広げると発表しました。全身の写真を登録すると、検索で見つけた服や靴を着た姿を確かめられます(Web担当者Forum)。IKEAは部屋の写真から3Dの空間をつくり、家具を置いてみられる機能を2022年に米国で始めています(IKEA)。中国の淘宝も、2025年10月にAI試着を含む6つの買い物支援機能を発表しました(新華網)。
「確かめる」と「決める」は、人に残ります。ガートナーが2026年5月に発表した調査では、法人の買い手の69%が、AIが示した内容を営業担当者に確かめたいと答えました(Gartner)。消費者でも、先ほどの調査のとおり、AIにすすめられた商品を検索エンジンで確かめる人が多くいます。
最後に、購入後の口コミが、次の人のAIの答えの材料になります。レモン氏とフェルフーフ氏の言う「社会的・外部の接点」です。ある顧客の「使う・共有」が、ほかの顧客の「調べる・比べる」で読まれる情報になります。
その先には、AIが顧客の代わりに買う段階もあります。ガートナーは、人の代わりに商品やサービスを買う機械を「マシンカスタマー」と呼んでいます。ルールに沿って動く段階・AIが選ぶ段階・自律的に取引する段階の順に進むとしています(Gartner)。ただ、Visaの調査を見る限り、2027年の時点では、まだ一部の補充購入などにとどまると考えています。
私の見立て:まず、自社の業界でAIがどれだけ使われているかを知る

1. ECと消費財は、会話の中で購入まで進む。最後に決めるのは人
中国のアリババの事例で書いたように、AIとの会話の中で商品を選び、そのまま注文する流れは進んでいきます。ECや消費財では、ジャーニーが会話の中で完結する場面が増えるはずです。ただ、電通デジタルの調査では、生成AIを使っていて購買意欲がある人のうち、AIの答えをそのまま採用する人は2〜3%でした(電通デジタル)。会話の中で購入まで進んでも、最後に決めるのは人だと私は考えています。
2. 形のある商品は、AIに聞く・試す・買うがひとつの流れになる
家具を自宅に置いたらどう見えるか、服を着たらどうなるか。これまで店に行かないとできなかった「試す」が、オンラインでもできるようになってきました。AIに聞いて、試して、買うまでが、ひとつの流れになっていきます。ただ、試着の機能が購入率や返品率をどれだけ変えるかは、まだ第三者の検証が少ない段階です。
3. BtoBは、AIで調べる段階で候補が絞られる
法人の購買では、営業に会う前に候補がほぼ決まり、その候補づくりにAIが使われ始めています。営業に会えれば挽回できる、という前提は通じにくくなりました。AIに聞かれたときに候補に挙がるかどうかが、商談の数を左右すると考えています。
4. 新規事業も既存事業も、まず業界のAIの利用率を知る
2026年の時点では、生成AIを使う人の割合は業界によってかなり違います。旅行・金融・家電のように割合が高めの業界では、AIに聞かれたときに挙がる状態をつくることを優先します。住宅のように割合がまだ低い業界では、展示場・店頭・営業など、ほかのどの接点が効いているかを先に確かめます。新しい事業のジャーニーを描くときも、いまの事業を見直すときも、自社の顧客がAIをどれだけ使っているかを知るところから始めてください。
描き方:AIを入れたジャーニーマップを、5つの手順でつくる
AIを前提にしたジャーニーマップのつくり方を、手順ごとに書きます。図8は、その完成形のひな形です。

手順1 対象を決める:1枚のマップに、1人の顧客と1つの場面

ユーザー体験の調査で知られるニールセン・ノーマン・グループは、1枚のマップには1人の視点と1つの場面だけを描くよう勧めています(NN/g)。「顧客全体」のマップをつくると、どの段階の話も平均的になり、打ち手が決まりません。
まず、次の3つを1行で書きます。
- 誰が:顧客の種類(新規か既存か)・業種や年代・立場
- 何を:商品やサービスと、その価格帯
- どの場面で:検討を始めるきっかけと、マップの終わり(購入まで、または購入後の数か月まで)
たとえば「従業員300人の製造業の総務部長が、紙とExcelの勤怠管理をやめると決めてから、勤怠管理のSaaSを選び、導入して3か月使うまで」くらいまで絞ります。この総務部長は、選定の担当者にあたります。法人の購買は、先ほどの表のとおり関わる人が多くいます。決裁者・選定の担当者・現場で使う人は、聞くことも見る情報も違うので、別々のマップにします。
材料は、社内にあるものから集めます。営業の商談記録・問い合わせフォームの内容・カスタマーサポートへの質問・アクセス解析のデータです。マップは、こうした記録と顧客の声をもとに描きます。
手順2 段階と接点を書き出す:4種類の接点に「AIへの質問」を足す

横の軸に段階を並べます。図6・図8と同じ「知る」「調べる・比べる」「試す」「確かめる」「買う」「使う・共有」の6つで始めると描きやすいです。法人向けでも、まずはこの6つで描きます。そのうえで、ガートナーの6つの購買の仕事(課題の特定・解決策の探索・要件の定義・取引先の選定・検証・社内の合意)と照らして、社内の合意のような法人ならではの段階が抜けていないかを確かめます。
段階ごとに、顧客がふれる接点を、レモン氏とフェルフーフ氏の4種類(ブランド/パートナー/顧客/社会的・外部)に分けて書き出します。勤怠管理のSaaSの例なら、次のようになります。
| 接点の種類 | 「調べる・比べる」の段階での例 |
|---|---|
| ブランド | 自社サイトの機能ページ・料金ページ・導入事例 |
| パートナー | 販売代理店の提案・IT製品の比較サイトの掲載ページ |
| 顧客 | 社内での比較表づくり・同僚への相談 |
| 社会的・外部 | 比較記事・レビューサイト・同業者の話・AIの答え |
行動と気持ちの行も、記録をもとに仮で書いておきます。そこに「AIへの質問」の行を足します。顧客が各段階でAIに何を聞きそうかを、実際の言い方で書きます。段階ごとに、聞かれやすい質問の形があります。
| 段階 | 質問の形 | 勤怠管理のSaaSの例 |
|---|---|---|
| 知る | 課題の解決のしかたを聞く | 「勤怠の集計ミスを減らすには?」 |
| 調べる・比べる | おすすめや違いを聞く | 「シフト勤務に対応した勤怠管理システムのおすすめは?」「AとBの違いは?」 |
| 試す | 試し方や相性を聞く | 「〇〇(自社名)の無料トライアルで確かめるべき点は?」 |
| 確かめる | 評判や条件を聞く | 「〇〇の評判は?」「〇〇の料金は?」 |
| 買う | 手順や条件を聞く | 「〇〇の導入にかかる期間は?」 |
| 使う・共有 | 使い方や乗り換えを聞く | 「〇〇で残業の集計を自動にするには?」 |
質問は、頭で考えるより、記録から拾うほうが実際に近くなります。営業やサポートがよく受ける質問・サイト内検索の言葉・Search Consoleに出る長い検索語句・比較記事の見出しが材料になります。AIへの質問は検索の言葉より長く、条件が入りやすいので、「従業員300人」「シフト勤務」のような条件をそのまま入れて書きます。私は、1枚のマップで20〜30問を目安にしています。そのくらいあると、段階ごとの傾向が見えてきます。
手順3 AIで実測する:挙がるか・どう説明されるか・出典はどこか

書き出した質問を、ChatGPT・Gemini・GoogleのAIモードに入れて、答えを記録します。実測のときは、次の3つに気をつけます。
- 過去の会話やメモリーの影響を避けるため、ログインしない状態か、メモリー機能を切った状態で聞く
- AIの答えは毎回少しずつ変わるので、同じ質問を2〜3回聞く
- 実測した日を記録する(AIの答えは、時期で変わる)
記録する項目は、次のとおりです。
| 項目 | 見ること |
|---|---|
| 挙がるか | 自社の名前が答えに出てくるか。出るなら何番目か |
| どう説明されるか | 強み・価格・対象の顧客の説明が正しいか。古い情報や誤りはないか |
| 誰と並ぶか | 一緒に挙がる会社・代わりに挙がる会社 |
| 出典はどこか | 答えに示されたリンク先。4種類の接点のどれにあたるか |
いちばん役に立つのは、出典の記録です。出典を4種類に分けて数えると、自社サイトが使われているのか、比較記事やレビューサイトが使われているのかがわかります。外部の接点が多ければ、打ち手も自社サイトの外に向けることになります。採用ブランディングの記事では、弊社の診断で、採用の質問の出典の9割以上が外部サイトだった例を紹介しています。
勤怠管理のSaaSの例で考えます。「シフト勤務に対応した勤怠管理システムのおすすめは?」と聞くと、ChatGPTでは自社は挙がりませんでした。出典はIT製品の比較サイトと比較記事です。AIモードでは4番目に挙がりました。社名で料金を聞くと、古い料金のまま説明されました。図11は、こうした結果の記入例です。結果は、図8の「AIの答えの記録」の行に書き込みます。
手順4 顧客に聞いて確かめる:重要度と、AIを使ったか

ここまでは、企業から見た仮説です。マーク・ローゼンバウム氏らは2017年の論文で、マップを描くときに「すべての顧客が同じ接点を通り、どの接点も同じくらい重要だ」と思い込みやすいと指摘しています(Business Horizons)。仮説は、顧客に聞いて確かめます。
確かめ方は4つあります。
- 購入した顧客へのインタビュー。私は、5〜8人ほどを目安にしています。検討を始めたきっかけ・比べた会社・決め手・迷ったところを、段階の順に聞きます。「検討のときに、ChatGPTなどのAIを使いましたか。何を聞きましたか」も必ず聞きます
- 受注と失注の振り返り。法人向けなら、受注した案件と失注した案件の両方で、候補に入った時期と、比べた会社を営業から聞き取ります
- 問い合わせフォームの選択肢。「何で知りましたか」の選択肢に「ChatGPTなどのAI」を加えます
- アクセス解析。chatgpt.com・gemini.google.com・perplexity.aiなどから来た訪問を分けて見ます。どのページに着いて、問い合わせにつながったかを見ます
聞いた結果で、図8の「重要度」の行に◎○△をつけます。あわせて、行動と気持ちの行も、実際の言葉で書き直します。優先するのは、重要度が高く、顧客の不安が大きい接点です。
手順5 打ち手・担当者・指標を決めて、3か月ごとに測り直す

手順4で優先すると決めた接点から、打ち手・担当者・指標を決めます。
AIの接点の打ち手は、実測の結果で変わります。勤怠管理のSaaSの例なら、次の表のうち、料金の説明の修正・比較サイトと導入事例・営業資料の打ち手から始めます。図13は、その場合の半年分の進め方の例です。
| 実測の結果 | 打ち手の例 | 担当の例 |
|---|---|---|
| 説明が誤っている・古い | 公式サイトに、価格・機能・対象の顧客を文字で書き、年月を添える。FAQのページをつくる | Web |
| 条件で探すと挙がらない | 比較の判断材料(対応する業種・規模・連携するサービス)を、自社サイトに条件の言葉で書く | Web・マーケティング |
| 出典が外部サイトばかり | 比較サイトの掲載情報を最新にする。導入事例やレビューを集める仕組みをつくる | 広報・マーケティング・CS |
| 顧客がAIの誤った説明を信じたまま商談に来る | 営業資料に、よくある誤解への答えを入れる | 営業 |
指標は、AIの接点なら「決めた質問で挙がる割合」「説明が正しい割合」「出典に自社サイトや正しい情報のサイトが入る割合」の3つです。そこに、AI経由の訪問数と問い合わせ数を加えます。手順3と同じ質問を、3か月ごとに同じ条件で聞き直して、変化を見ます。マップそのものも、半年に1回ほど、顧客の声をもとに描き直します。
まとめ:2027年のカスタマージャーニーは、AIの接点から描く
理論の流れを見ると、顧客が自分で調べ、企業が管理できない接点が増えるという変化は、AIの前から続いてきました。AIは、その流れの延長で「調べる」「比べる」の段階に入りました。業界によって、AIの使われ方には差があります。
明日からできることは3つあります。最初の一歩として、自社の顧客がAIに聞きそうな質問を10個書き出す(マップをつくるときは20〜30問に広げます)。その質問をChatGPT・Gemini・GoogleのAIモードに入れて、自社が挙がるか、どう説明されるかを記録する。そして、購入した顧客に、検討のときにAIを使ったかを聞く。この3つで、自社のジャーニーのどこにAIが入っているかが見えてきます。
調査の概要:英語・日本語・中国語の資料を確認
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 言語 | 英語・日本語・中国語 |
| 資料の数 | 37件 |
| 資料の種類 | 学術論文・調査会社や研究機関の報告書・政府や業界団体の資料・企業の発表・報道 |
| 確かめ方 | 数字は、できる限り一次資料で確かめた。一次資料を確認できなかったものは、報道の媒体名を出典に示した |
| 情報の時点 | 2026年10月19日 |
アースダイバーでは、海外の市場調査など、戦略づくりのための調査業務を承っています(ご相談はこちら)。
注意点:調査の対象と時点で、数字は変わる
1. 米国の調査が多い
マッキンゼー・Pew Research・アドビなどの数字は、米国の調査です。日本の顧客にそのまま当てはまるとは限りません。
2. 「AIを使う人」の割合は、母数で大きく変わる
一般の人全体を母数にした調査と、AIを使っている人を母数にした調査では、数字が大きく違います。たとえばマッキンゼーの44%は、AI検索の利用者のうちの割合です。読み比べるときは、誰に聞いた数字かを確かめてください。
3. サービスを提供する企業の調査も含む
6sense・G2・HubSpot・アドビ・Visaなど、関連するサービスを提供する企業の調査も含みます。傾向の目安として扱ってください。
よくある質問:カスタマージャーニーとAI
Q. カスタマージャーニーとは何ですか?
顧客が商品やサービスを知り、調べ、比べ、買い、使い、次の購入や紹介につながるまでの道のりのことです。その道のりを、顧客の行動・考え・気持ちと、企業との接点に分けて図にしたものをカスタマージャーニーマップと呼びます。
Q. AIで、カスタマージャーニーはどう変わりましたか?
「調べる」「比べる」の段階が、検索結果のページからAIとの会話へ移りつつあります。米国では、AI検索の利用者の44%がAI検索をいちばんの情報源に挙げています。一方で、購入までAIに任せる人はまだ少なく、最後に決めるのは人だと私は考えています。
Q. 業界によって、AIの使われ方は違いますか?
違います。日本の調査では、旅行・金融商品・家電・PCで生成AIを使う人が多めで、住宅・不動産・ゲームでは少なめでした。
Q. AI時代のジャーニーマップは、どうつくればよいですか?
いつもの接点に加えて、各段階で顧客がAIに何を聞くかを書き出します。その質問を実際にAIに入れて、自社が挙がるか、どう説明されるかを確かめ、打ち手と指標を決めます。
参考:McKinsey/Journal of Marketing/カオナビ/dentsu-ho/McKinsey/Google/Gartner/Google/Journal of Advertising Research/コマースピック/博報堂買物研究所/Cox Automotive/J.D. Power/国土交通省/生命保険文化センター/Web担当者Forum/厚生労働省/Forrester/リクルート進学総研/Pew Research Center/6sense/G2/ECのミカタ/コマースピック/ネットショップ担当者フォーラム/ネットショップ担当者フォーラム/PR TIMES/Adobe/Adobe/Web担当者Forum/IKEA/新華網/Gartner/Gartner/電通デジタル/NN/g/Business Horizons


