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コーポレートサイトをAIと作り直したら、5時間でできた話

佐藤 大貴佐藤 大貴 公開 2026.10.24更新 2026.10.24
コーポレートサイトをAIと作り直したら、5時間でできた話
この記事のポイント
  • このサイトは、デザイン18画面と全ページの文言を、AIとの対話約5時間で作った。工程ごとに合意する進め方をやめ、完成形を作っては見て決めた
  • AIで作業が速くなるぶん、人が判断する回数と、最初に渡す意図の重みが増す。その場の指摘は、次の仕事の判断基準として残る
  • 効いた話し方は6つ。まず喋る、誰に・何のために・どこまでを伝える、複数案を並べる、違和感を伝える、詰まったら一段上げる、言葉の強さを分ける。どれも海外の研究に裏付けがある

こんにちは、アースダイバー代表の佐藤です。AIが広がって、ウェブマーケティングは取るべき戦略も、実行のやり方も変わりました。アースダイバーは、その新しい前提で戦略を考え、実行する仕組みまでつくる会社です(ご相談はこちら)。

いきなりですが、弊社のコーポレートサイトは、ほぼAIで作りました。デザイン18画面と全ページの文言で、対話した時間は合計で5時間ほど。 指示は、ほとんどベッドに寝転がったまま音声入力で出しています。

この記事では、どう作ったのか、作ってみて何がわかったのか、AIとどう話すとうまくいったのかを書きます。やってみて効いたと感じたやり方は、あとで調べると、海外の研究者が以前から指摘していたことと重なる部分が多くありました。その研究もあわせて紹介します。

目次
  1. 18週間の計画をやめ、デザインと文言を3日の対話で揃えた
  2. 2AIと作ってみてわかった、4つのこと
  3. 3AIと作るときに効いた、6つの話し方
  4. 4おまけ:公開まで、エンジニアに頼まずに済んだ
  5. 5サイトの外でも、「この会社は何を言うのか」が問われている
マーケティングの課題を、コンサルタントに相談する →

8週間の計画をやめ、デザインと文言を3日の対話で揃えた

きっかけは、9月下旬に出たClaude Opus 5.5です。AnthropicのAI「Claude」の最上位モデルの新しい版で、長くて込み入った仕事に強いのが売り。触ってみていちばん変わったと感じたのは自律性で、一度頼むと、前よりずっと長く自分で考えて手を動かし続けます。Anthropicの発表にも、ある企業が開発作業を一晩任せたら18時間以上ひとりで走り続けた、という例が載っています(Anthropic)。

リニューアルは、もともと実装まで含めて8週間で計画していました。方針、原稿、ワイヤー、デザイン、実装の順に、工程ごとに確認して進める、よくある進め方です。ところがワイヤーを作らせようとしたところで、気づいてしまったんです。このモデルなら、文言も色も余白も入った完成形をいきなり作れる。それを見て「ここ違う」と言えば、その場で直る。……じゃあ、骨組みいらないな。

そこで計画をやめて、完成形を作っては見て直す、という進め方に切り替えました。デザインと文言は3日の対話で揃いました。実装は開発会社にお願いするつもりでしたが、そこも最後に変えています(記事の終わりで触れます)。

図1:合意してから作る進め方を、作ってから見て決める進め方に変えた

時間の使い方は、かなり偏っています。約5時間のうち6割は、TOPページで「この会社は何を言うのか」を詰める議論でした。 そこが決まってからは早く、下層の17画面は1時間半で揃いました。

図2:約5時間のうち、6割はTOPページの議論だった

指示は、完成形を指定せず、見て引っかかったことをそのまま言うものがほとんどでした。たとえば、AIが最初に出してきたTOPページの案を見て、私が言ったのはこれです。

実際の指示(音声入力のまま)「これってコーポレートサイトのトップページではなくないか、この内容って」

最初の案は、サービスの説明が前に出すぎていて、会社を紹介するページになっていなかったんです。AIはこのひと言で、会社を紹介するページの型に組み直し、方向の違う案を3つ並べて返してきました。雑ですよね。でも、これで通じるんです。

図3:完成形は指定せず、引っかかったことを言った

この制作で、5時間をどこにどう使ったのか、AIと人がどう分担したのかは、事例集のCASE 28にもまとめています。

AIと作ってみてわかった、4つのこと

ここまでが、作った過程です。ここからは、作ってみて考えたことを4つにまとめます。

1. 合意してから作るより、作ってから見て決めるほうが早い

ワイヤーフレームは、そもそも何のためにあるのか。今回いちばん考えさせられたのは、そこでした。

デザインを作るのには、時間もお金もかかります。だから先に骨組みで合意して、作り直しを減らす。これまでの制作の工程は、作るのが高くつくことを前提に組まれてきました。

ただ、この進め方には弱点があります。骨組みの段階では、出来上がりを想像で判断するしかないことです。ソフトウェア開発には「Humphreyの法則」として知られる考え方があって、利用者は、実際に動くものを見て使うまで、自分の要求を本当には理解しないと言われています(Humphrey(1995)を引いた講義資料)。建築やデザインの実務家を研究したDonald Schön氏も、作り手は、作ったものを見て「思っていたのと違う」という反応を受け取りながら考えを進めていく、と書いています(『The Reflective Practitioner』1983年)。

今回もそうでした。たとえば、あとで出てくる「言い訳に見える」という違和感は、文言と見た目が入った完成形を読んで、はじめて出てきたものです。骨組みの段階で合意していても、完成形を見た時点でひっくり返っていたと思います。

AIで作るコストがほぼゼロになると、前提が変わります。完成形を作って見るほうが、骨組みで合意するより早く決まる。計画をやめられたのは、これに気づいたからです。制作に限らず、いま当たり前にやっている手順のうち、どれが「作るのは高い」という前提の上に立っているのか。一度疑ってみる価値はあると思います。

2. 作業が速くなったぶん、人が判断する回数が増えた

約5時間で、約90回の指示を出しました。ならすと、3分に1回は何かを決めていた計算です。

AIで作業が速くなれば楽になる。そう思っていたんですが、実際は逆でした。案はいくらでも出てきます。そのぶん、どれを選ぶか、どこが違うのかを、こちらが決め続けることになりました。

ノーベル経済学賞を受けたHerbert Simon氏は、1971年にこう書いています。

情報の豊かさは、注意の貧困を生む。A wealth of information creates a poverty of attention.— Herbert Simon、1971年

AIが次々に出す案は、ここでいう豊かな情報です。案が増えるほど、人がどこに注意を向けて何を選ぶかが、結果を左右するようになります(Simon 1971)。

人に残るのは、選ぶことだけではありません。ハーバード・ビジネス・スクールなどの研究者が、BCGのコンサルタント758人で行った実験があります。AIが得意な範囲の仕事では、AIを使った人は作業を25.1%速く終え、質は40%以上高くなりました。一方で、AIが苦手な範囲の仕事では、AIを使った人のほうが、正しい答えにたどり着く割合が19ポイント低かったんです(Dell'Acqua氏ら、2023年)。どこまでAIに任せてよいかを見極めるのも、人の判断です。

だから、判断の質がそのまま結果の質になると感じました。弊社の場合、その判断を支えていたのは、この半年、支援の現場で生成AIの進化を毎日のように見てきた経験です。

図4:作業はAIに任せ、人は判断に集中した

判断が増えるのは、正直しんどいです。ただ、AIも一度言ったことは次から守ってくれます。最初は長々と説明していたのが、最後は「一旦OK、次」で通じるようになりました。判断の回数は増えても、一回あたりの重さは軽くなっていく。これは、やってみてはじめてわかったことでした。

3. AIに渡すべきは、手順より意図

Opus 5.5は、一度頼むと長く自分で動きます。そのぶん、最初に渡す意図の重みが増しています。

なぜこの資料を並べるのか。誰に、何を伝えたいのか。そこを渡さずに任せると、情報を継ぎはぎで並べたようなものが、まだ返ってきます。逆に、背景の意図をひと言添えるだけで、出てくるものが大きく変わります。

これは、軍隊の指揮の考え方に近いと思います。米陸軍の教範は、「指揮官の意図」を次のように定めています。

指揮官の意図とは、作戦の目的と、望ましい最終状態を、明確かつ簡潔に表したものである。The commander's intent is a clear and concise expression of the purpose of the operation and the desired military end state.— 米陸軍 ADP 6-0(2019年)

定義の続きには、意図が伝わっていれば、作戦が計画どおりに進まないときでも、部下は追加の命令なしに目的に向けて動ける、と書かれています(ADP 6-0)。長く自分で動くAIも同じで、細かい手順より、目的とゴールを渡したほうが、途中の判断を任せられます。

4. 指摘の積み重ねが、次の仕事の判断基準になる

最後に、ちょっと面白いことをしました。制作を担当したClaudeに、私の指示そのものを分析させたんです。言葉と言葉のあいだで何が起きていたのかを知りたくて。返ってきた答えから、2つ抜粋します。

CLAUDE の分析よりあなたの指示の多くは、正解を示さず、外れている方向だけを示していました。ただ、実物を見たあとに出てくる違和感には、判断の基準がかなり具体的に含まれています。
CLAUDE の分析よりひとつひとつはその場の修正です。でも積み重なると、この会社が何をよしとし、何を避けるのかの基準になります。

実際、そうなっていました。「メタファーいらない」「URLにテーマを英語で書くのは避けたい」。その場で口にしたひと言が、「タイトルに比喩を使わない」「記事のURLは番号にする」という決まりごとになりました。対話の記録が残っているので、そのあとの作業でもAIがそれを踏まえてくれます。ホワイトペーパーや開発会社に渡す仕様書、このメディアの記事にまで、言い直さなくても引き継がれていました。この記事のURLが番号なのも、そのためです。

図5:その場のひと言が、次の仕事の決まりごとになった

経営学者の野中郁次郎氏は、言葉にしにくい知識(暗黙知)を、言葉や形にして共有できるものに変えることを「表出化」と呼び、対話がそれをうながすと書いています(Nonaka 1994)。野中氏が論じたのは人と人の対話ですが、AIとの対話でも、これに近いことが起きていたと思います。これまで言葉になっていなかった判断の基準が、対話のログとして残る。 作ったサイトより、実はこっちのほうが次の仕事に効くんじゃないかと思っています。

AIと作るときに効いた、6つの話し方

経験と勘でやった部分も、もちろんあります。ただ振り返ると、効いていた話し方はかなりはっきりしていました。全体像は、こんな感じです。

図6:AIとの話し方の全体像

ここからは、それぞれの話し方を、実際の場面と、そのまま使える言い方の例を添えて書きます。

1. まず、整理しないまま全部喋る

いちばん大事だったのは、たぶんこれです。考えていること、これまでの経験、背景、迷っていること。整理しないまま、とにかく全部話して渡します。

書こうとすると、どうしても整えて削ってしまいます。喋ると、削る前のものがそのまま渡せる。それに、喋っているうちに、自分の考えのほうがまとまってきます。組織心理学者のKarl Weick氏は、「言ってみるまで、自分が何を考えているかなんてわかるだろうか」(How can I know what I think until I see what I say?)という言葉で、人は口に出してみてはじめて自分の考えをつかむ、と説明しています(『Sensemaking in Organizations』1995年)。整理してから話すより、話しながら整理するほうが、考えは早くまとまります。

AIの側も、背景を渡すほど汲み取りやすくなります。Anthropicの公式ガイドは、Claudeを「優秀だけれど、職場の決まりや進め方を知らない新入社員」と考えて、求めることを詳しく説明するようすすめています(Anthropic)。

しかも、喋るのは速いんです。スタンフォード大学などの研究では、スマホでの入力は、音声がキーボードより英語で2.93倍、中国語で2.87倍速く、入力中の誤りも音声のほうが少ない結果でした(Ruan氏ら)。手もふさがらないので、こっちの作業をAIに走らせているあいだに、あっちの作業の指示を喋る、という進め方もできます。

言い方の例場面:リニューアルを始める最初の場面「いまのサイトに感じてる不満と、会社として最近考えてることを全部話すから、まずは整理してみて。結論はまだ出さなくていい」

2. 最初に、渡す相手・目的・完成度を伝える

さっきの「指揮官の意図」を、実際の指示に落とすとこうなります。今回、最初にAIに頼んだのは、開発会社への見積依頼の準備でした。そのときの指示は、雑に見えて、実は3つのことを言っています。渡す相手は開発会社。目的は見積もり。完成度は85〜90%。

実際の指示(音声入力のまま)「今、弊社が開発系を依頼してるところへ(中略)85%から90%完成デザインみたいなものをこっちで渡して、(中略)見積もりを先方にしてもらいたくて、そのための素材を用意してください」

この3つがそろうと、AIは何をどこまで作ればいいかを自分で決められます。 逆にここが抜けると、きれいだけど使い道のないものが返ってきます。

言い方の例場面:営業資料を作ってもらう場面「来週、初めて会う製造業の部長に渡す資料。目的は2回目の打ち合わせを取ること。中身は6割くらいの完成度でいいから、まず全体の流れを作って」

3. 方向の違う案を、複数並べてもらう

TOPページで「トップページではなくないか」と言ったとき、AIは頼んでもいないのに、方向の違う案を3つ並べて返してきました。これで一気に進んだんです。1案だけだと「いいか、悪いか」しか言えません。並んでいると、「この案のこの部分」「これとこれの間」と、言葉にしにくい好みが言えるようになります。それ以来、迷いそうな場面では、自分から複数の案を頼むようにしました。数は3つでなくても構いません。大事なのは、方向が違う案を同時に見比べることです。

これには研究の裏付けがあります。スタンフォード大学のDow氏らは、ウェブ広告のデザインで、1案ずつ直していくグループと、複数の案を同時に作って比べるグループを比べました。複数案のグループの広告は、クリック率(100万表示あたり445.0回と397.9回)でも専門家の評価でも上回り、案の幅も広がりました(Dow氏ら、2010年)。

見る側の反応も変わります。Microsoft ResearchのTohidi氏らの研究では、1案だけを見せられた人は評価が甘くなり、否定的な意見も減りました。別の案と並べて見せると、批判がはっきり出てくるそうです(Tohidi氏ら、2006年)。Hsee氏らも、単独では評価しにくい違いが、並べて比べると評価しやすくなることを示しています(Hsee氏ら、1999年)。並べると違いが見え、どこが嫌かも言いやすくなるわけです。

言い方の例場面:LPのファーストビューを作ってもらう場面「方向がまったく違う案をいくつか出して。それぞれ、何を優先した案なのかもひと言で」

4. 違和感は、直し方より「どう見えるのが嫌か」を伝える

TOPページで、「少人数でも深く早く」というコピーの案が出てきたときのことです。読んだ瞬間、何かが引っかかりました。そこで言ったのがこれです。

実際の指示(音声入力のまま)「少人数でも深く早くって、単にしょぼいことの言い訳をしているように見えてしまう」

この指示は、直し方を一切指定していません。でも、読み手にどう見えるのが嫌なのかは、はっきり伝えています。

直し方まで指定すると、仕上がりは自分の想像の範囲で止まります。 どう見えるのが嫌かを渡すと、AIはこちらが思いつかなかった語り直しを返してきます。このときは、少人数であることを「判断をAIで大きく効かせる前提」として語り直す案が返ってきました。自分では出てこなかったと思います。

Anthropicの公式ガイドも、指示には「なぜそうしてほしいのか」という背景や理由を添えると、AIが目的を理解しやすくなり、より的確に応えられると書いています(Anthropic)。「言い訳に見えるのが嫌だ」は、まさにその理由にあたります。

違和感は、うまく説明できなくても口に出す価値があります。哲学者のMichael Polanyi氏は、人は語れる以上のことを知っている(we can know more than we can tell)と書きました(『暗黙知の次元』1966年)。この言葉を借りれば、違和感は、まだ言葉になっていない判断が表に出てきたものです。直し方はわからなくても、どこが嫌かは言えるはずです。

言い方の例場面:AIが作った営業資料を読んで引っかかった場面「これだと、なんか押し売りっぽく見える。どこがそう見せてるのか考えて、直してみて」

5. 直しても決まらないときは、ひとつ上の問いに戻る

説明がいちばん難しくて、いちばん効いたのがこれです。

文言やデザインを直していると、何度直してもしっくりこない場面が出てきます。言い回しを変える、順番を入れ替える、色を変える。それでも決まらない。そういうとき、原因はたいてい、いま直している段のひとつ上にあります。

制作の判断には、だいたい4つの高さがあります。いちばん下が「どう言うか、どう見せるか」。その上に「何を、どの順で見せるか」。さらに上に「誰に、何を伝えたいか」。いちばん上が「そもそも、うちは何者か」。下の段は、上の段が決まっていないと決めようがありません。何を言いたいのかが決まっていないのに言い回しだけ磨いても、正解がないので終わらないんです。

先ほどのSchön氏も、実務では問題は最初から与えられておらず、問題を解く前に「何を問題とするか」を設定する過程がある、と指摘しています。言い回しで詰まるのは、多くの場合、問題の設定がまだ済んでいないからです。

TOPページでは、これを2回やっています。

1回目は、最初の案に「トップページではなくないか」と言った直後です。並んだ案から方向は選べたものの、何を打ち出すかがまだ決まっていませんでした。そこで細かい修正を重ねるのをやめて、こう投げました。

実際の指示(音声入力のまま)「もうちょっと抽象概念化させてから、どうあるべきかをちゃんと考えないと」

そこから話したのは、「AIの時代に、うちみたいな会社の価値はどこに残るのか」という、いちばん上の段の話です。AIに、AI時代の価値をめぐる議論を調べてもらい、価値が残るのは「判断」と「経験」だと整理しました。

2回目は、その日の夕方です。先ほどの「少人数でも深く早く」が、言い回しを変えても言い訳に見える。そこで「言い訳に見える」と伝えると、AIは午前に決めた前提に照らして、少人数であることを「経験に基づく判断を、AIで大きく効かせるための前提」として語り直してきました。前提が決まっていたから、語り直しの方向も決まったんだと思います。そこから下に降りると、言い回しはすぐに決まりました。メインコピーの「10Xではなく、100Xのマーケティングを。」は、この往復の中で出てきたものです。

図7:判断には4つの高さがあり、詰まったら一段上げる

やり方としては、3つの手順です。

  1. 直す指示を、いったん止める:同じ段で何度直しても決まらないなら、その段の問題ではないと考えます
  2. ひとつ上の段の問いを、AIに投げる:「どう言うか」で詰まったら「何を言いたいのか」を、「何を言いたいのか」で詰まったら「誰に、何のために」を問い直します
  3. 上で決まったことを物差しにして、降りて直す:「この方針で、さっきの案を見直して」と、決まったことを基準に戻ります

3つ目を忘れないでください。上の段で決めたことは、下の段の判断基準になります。 基準があれば「この言い回しは方針に合っているか」で選べるので、好みで迷う時間がなくなります。上げっぱなしで終わると、きれいな方針が残るだけで、ページは何も変わりません。

たとえば、メインコピーが決まらない場面なら、こんなふうに言います。

  • 「細かい言い回しはいったん置いて、そもそもこのページで何を言いたいのか、から考え直そう」
  • 「いま決めた方針で、さっきの案をもう一度見て。方針に合っていないのはどこ?」

具体的な指示を重ねるより、ひとつ上の問いを投げたほうが、結果的に具体がよくなる。やってみると、これがいちばん実感したことでした。

6. 守ってほしいことと迷っていることは、言葉の強さで分ける

さっきのClaudeによる分析には、こんな指摘もありました。

CLAUDE の分析より「かも」が付く指示は検討の余地があるものとして、「避けたい」は守るべき条件として受け取っていました。話し言葉のままの指示には、整えた文章では消えてしまう温度が残っています。

……音声入力の「かも」まで読まれていたのは、正直ちょっと驚きました。「いらないかも」は相談、「避けたい」はルール。AIはこの差をちゃんと読んでいます。

だから、守ってほしいことは言い切る。迷っていることは、迷っているまま言う。迷いを無理に言い切ると、AIはそれをルールとして守り続けます。逆に、守ってほしいことを「かも」で言うと、検討の余地があるものとして扱われてしまう。言葉の強さは、そのまま指示の効き方の違いになります。

言い方の例場面:ページを横断して直してもらう場面「記事のURLは番号にする。これはルールね、このあとも全部これで」「サービス紹介の写真は、人物を入れるかまだ迷ってる。入れる案と入れない案、両方作っておいて」

……あと、これはおまけですが。AIが気を利かせて埋めてくれた「仮」の部分は、必ず疑ってください。今回も、頼んでいない記事タイトルがいつの間にか入っていて、あわてて外しました。

おまけ:公開まで、エンジニアに頼まずに済んだ

冒頭で、実装は開発会社にお願いするつもりだったと書きました。結局、そこもAIとの対話で済ませています。

デザインと記事がそろったあと、AIにサイトのコードまで書いてもらい、GitHubに置いて、Cloudflare Pagesで公開する形にしました。記事18本・ニュース・お役立ち資料・お問い合わせまで、あわせて43ページです。フォームのメールはResendという送信サービスで送り、スパム対策にはCloudflareのTurnstileを使っています。

私がやったのは、GitHubとCloudflareのアカウントの操作と、DNSとドメインの設定の書き換えくらいです。どの画面のどこを押すかは、AIがひとつずつ案内してくれました。作業を始めてから公開まで、その日のうちに終わっています。

公開したあとの更新も、話しかけるだけです。「ニュースを出して」と言えば、AIが原稿を書き、表示を確かめてから公開します。ただ、社内の何人もが管理画面から記事を書く会社なら、WordPressのほうが向いていると思います。

サイトの外でも、「この会社は何を言うのか」が問われている

最後にもうひとつだけ。今回いちばん時間をかけた「この会社は何を言うのか」という問いは、サイトの外でも問われています。ChatGPTやGeminiに「おすすめの会社」を聞いたとき、AIは各社が何を言っているかを読んで、答えを組み立てるからです。そのあたりは、AIO対策の記事と、下の資料にまとめています。

参考:Introducing Claude Opus 5.5(Anthropic)/Humphrey(1995)を引いた講義資料(Andrews University)/Schön『The Reflective Practitioner』(1983年)/Simon「Designing Organizations for an Information-Rich World」(1971年)/Dell'Acqua ほか「Navigating the Jagged Technological Frontier」(2023年)/米陸軍 ADP 6-0 Mission Command(2019年)/Nonaka「A Dynamic Theory of Organizational Knowledge Creation」(1994年)/Weick『Sensemaking in Organizations』(1995年)/Anthropic「Prompting best practices」/Ruan ほか「Comparing Speech and Keyboard Text Entry」/Dow ほか「Parallel Prototyping」(2010年)/Tohidi ほか「Getting the Right Design and the Design Right」(2006年)/Hsee ほか(1999年)/Polanyi『The Tacit Dimension』(1966年)

佐藤 大貴 WRITTEN BY佐藤 大貴アースダイバー株式会社 代表取締役DeNAで男性向けライフスタイルメディアの立ち上げを牽引し、ローンチから約1年半で月間3,000万PV規模に。ポートではコンテンツマーケティング責任者として幅広い領域のメディアを管掌し、上場とM&Aを経験。2019年に創業し、AI時代のマーケティング戦略とその実行を手がける。プロフィールを見る →LinkedIn
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